兄弟姉妹鑑定
人に観察される2つのDNA型の内、実母と一致したDNA型を排除した残りのDNA型は、その人の生物学上の父由来のものです。
実母のサンプル提供が何らかの事情で不可能で、実母由来のDNA型が特定できない場合は、被鑑定者に観察された2つのDNA型のいずれか一方が父由来のものであることを考慮し分析を行います。
検査するDNAローカスにてそれぞれの擬兄弟姉妹に観察された「生物学上の母または父由来と考えられるDNA型」が一致するかどうかを分析し、両親を同じくする兄弟姉妹らしいかどうかを検証します。
しかしながら、兄弟姉妹鑑定においては、直系の鑑定である母子鑑定や父子鑑定と明らかに異なる注意点があり、同じDNAローカスにてそれぞれの擬兄弟姉妹に観察された「生物学上の母または父由来と考えられるDNA型」が一致しなくとも、生物学上の両親を同じくする兄弟姉妹の可能性から完全には排除することができません。
遺伝子学上の理由(メンデルの法則)により、生物学上の両親を同じくする兄弟姉妹であっても、すべてのDNAローカスにおいて両親より同じDNA型を受け継いでいるとは限らず、「生物学上の母または父由来と考えられるDNA 型」が一致しない箇所が観察される場合があり、その可能性は、両親を同じくする兄弟姉妹関係では、1/4の頻度で発生します。(実母のサンプル提供がない場合。ある場合は1/2の頻度にて発生。)
よって、同じDNAローカスにて「生物学上の母または父由来と考えられるDNA型」の一致が観察されなくとも、1/4(兄弟姉妹関係指数は0.25と表示)の両親を同じくする兄弟姉妹の可能性が残されることになります。
鑑定では、擬兄弟姉妹間でそのDNA型の一致が観察されなかったDNAローカスが出現した場合には、両親を同じくする兄弟姉妹の可能性を3/4排除し、DNA型の一致が観察されたDNAローカスが出現した場合には、限られたDNA型パターン中の血縁関係がない中での偶然による一致の可能性や、同じ母または父由来のDNA型の血縁関係がある中での必然による一致の可能性をそれぞれ考慮し、両者間にその兄弟姉妹関係がない(ある)可能性と比べて何倍兄弟姉妹らしい(らしくない)のかを分析します。
よって、兄弟姉妹鑑定では、その肯定確率を100%の完全肯定または0%の完全否定で算出することはいかなる場合も不可能となりますが、それぞれのDNAローカスにおけるDNA型の出現頻度により、兄弟姉妹関係指数及び兄弟姉妹肯定確率を算出し、その肯定確率から兄弟姉妹関係の確からしさを評価します。
また、兄弟姉妹肯定確率は、兄弟姉妹間における生物学上の父または母からのDNA型の受け継ぎ方(共有の仕方)によって大きく左右されます。
2人が生物学上の兄弟姉妹である場合でも、下記のような状況によっては、兄弟姉妹肯定確率の数値に大きく影響を及ぼします。
①稀なDNA型をともに受け継いだ生物学上の兄弟姉妹
擬兄弟姉妹の両者とも非常に稀なDNA型を共有していることが確認できれば、その2人が生物学上の兄弟姉妹である、と推定するに及ぶ極めて高い肯定確率が算出されると思われます。
②一般的なDNA型のみを受け継いだ生物学上の兄弟姉妹
2人が生物学上の兄弟姉妹であっても、一般的なDNA型のみしか確認されなければ、肯定確率は高くなりにくくなります。
それは、一般的なDNA型は、仮に生物学上の兄弟姉妹でなくても、偶然の一致により両者に存在する可能性が高く、その可能性を考慮に入れる必要があるためです。
③共有するDNA型が多く確認できない生物学上の兄弟姉妹
母がA-B、父がC-DというDNA型を同じローカス上に持っていた場合、子が持ち得るDNA型は、「メンデルの法則」によって、A-C/A-D/B-C/B-Dの4通りが推測されます。
よって、生物学上の兄弟姉妹であっても、検査したローカス上で共通のDNA型を持たない部位を多く確認することもあります。
このような統計学上の理由から、2人が生物学上の兄弟姉妹である場合でも、肯定確率を決定的な数値にてお出しできない場合があります。
以上のように、同じ父(または母)をもつ兄弟姉妹が、両者とも必ずしも同じローカス上に同じDNA型を共有しているとは限らず、兄弟姉妹肯定確率の数値においても、必ずしも決定的な確率にてお出しできるとは限りません。
よって、父子鑑定のためのサンプル提供が困難な場合の、次に優先される手段として兄弟姉妹鑑定を行うことをお勧めいたします。
※上記の説明は、共通の実母を伴う、父を同じくする兄弟姉妹かどうかの鑑定(子の母のサンプル提供なし)を前提として記述しています。
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